はじめに
私はTEXNITISというロボコングループに所属していて、2020年の学生ロボコンに参加しようとしていました。
しかし、7月22日、COVID-19の影響により部活動の継続が困難となり、今回の学生ロボコンを棄権することを決定いたしました。
一年間ロボット製作を続けてきていましたので、非常に残念な気持ちです。
悲しいので、製作を振り返りながらロボットに搭載していたキック機構の説明をしようと思います。
大学側から課外活動の再開が未定となった通知を受けて東京都立大学ロボコン部TEXNITISは2020年度NHK学生ロボコンを棄権します。
— 東京都立大学ロボコン部TEXNITIS (@tmuTEXNITIS) 2020年7月22日
応援してくださって皆様、有難うございました。
まず、そもそも私は高専ロボコン時代からなんちゃって制御となんちゃって回路しかやってきませんでした。
しかし、TEXNITISは設立間もなく、部員の数も限りがあり、できることだけというわけにはいきません。
人員不足によりなんちゃって設計をやることになってしまいました。
なので、設計と呼べるかアレですけど見逃してください。
キック機構ver1
さて、最初に私が設計したのは以下のような、人間の脚を模したような二関節型の機構です。
以下の図のように、歯車、プーリを介して、モータの回転が2つの関節に伝わります。
第一関節はモータの回転に対して減速比が1ですが、第二関節はモータの2倍の速度で回転するように設計しました。
これによって、一つのモーターで人間の脚の動きを模した動きを再現することができました。
実際に製作したものが以下です。
しかし、動かしてみるとパワーが出ず、良いものとは言えませんでした。
実際にボールを蹴ってみても、全然飛ばず、設計から作り直すことにしました。
これはキックver1の動くゴミ pic.twitter.com/ZBTekirlj6
— ヒダカ (@newlvAlPr) 2020年7月25日
というのも、正直、この2関節型の機構は先に構造が浮かんでしまい、面白そうという理由で製作を進めてしまっていたというのがあります。
モーターはRS-775を使用していて、大体の概算から出力的には十分という認識だったのですが、ボールに衝突するまでの時間が少なく、モータの全速が出る前にボールに当たっているという感じでした。
ver2
これはいかんと思い、次に思いついたのは以下のような非常に単純な機構です。
だいたい1回転あればモータ全速がでるという計算だったので、
関節を1つだけにし、無限回転できるようにしました。
ここで一つ問題があり、ロボットの片側に搭載することを想定していました
(TRに乗せることを考えていたため、キックを真ん中に配置するとボールのキャッチができない)
ので、そのせいでモーター軸の反対方向に軸受けを設けることができず、機構を片持ち張りにする必要がありました。
これではキックの衝撃に耐えられのに十分な強度があるのか不安でした。
そこで考えたのが以下のようなパーツです。
モータ本体の周りにベアリングの外輪を沿わせ、モータ本体を軸受けのようにするという発想です。
実際に製作したものが以下です。
NCフライス盤で切削した2000アルミと、3Dプリンタで製作したパーツからなっています。
モータ本体(IG42)を軸受けにすることに成功しました。朱雀技研に怒られてしまう
IG42を回転させることに成功した pic.twitter.com/z7Bak6nauT
— ヒダカ (@newlvAlPr) 2020年2月12日
これにより、一関節型のキック機構の設計を完成させました。
ここで、ちょっとした小技ですが、以下はIG42のまわりに添わせるスペーサです。
一部が欠けた形状にすることで、機体の分解をせずに着脱ができるようにしました。
以下が実際に製作したものです。
これで、実際にボールのキックをおこなった様子が以下です。
KZ2程度(8mくらい)の飛距離を確認できました。
2月後半の時点での足です。映像ではKZ2ほどの飛距離しか出ていませんがこの後KZ3からも狙えるようになりました。KZ3クラスの映像はコンプライアンス的にアウトなので見送ります pic.twitter.com/E4I6yNs8Ej
— 東京都立大学ロボコン部TEXNITIS (@tmuTEXNITIS) 2020年7月22日
しかし、KZ3程度(10mくらい)の飛距離はでておらず、さらに改良を行う必要がありました。
最初に目を付けたのは、モータ軸と中間軸、さらに中間軸と脚の固定部分です。
モータ軸と中間軸の固定は以下のようなカップリングを、
中間軸と脚の固定はセットカラーを使用していました。
- カップリング
- セットカラー
これらがどうも衝突の瞬間に滑っているようで、まずはここを何とかする必要があると考えました。
まずは中間軸と脚の固定部分から手を付けました。
どうしようかと部室をうろうろしていると、以下のようなフランジ部品を見つけ、これを使用することにしました。
これによって以下のように機構を改良しました。
キー付きの軸を使用することで、中間軸と脚との間の滑りは完全に解決しました。
しかし、これでもまだ滑っているようで、モータ軸と中間軸の滑りが原因です。
ただし、設計も大幅に変更できないので、すでに使用していたカップリングで滑りをなくす必要がありました。
最初に考えたのは、カップリングの隙間にキー(のようなもの)をはさみこむというものです。
以下のような小さいパーツを切削し、カップリングの溝と、軸のキー溝の間にはまり込むように取り付けました。
しかし、これでキックを行うと、その衝撃によりキーが粉々に砕け散ってしまいました。
これは非常に良くない、もっとちゃんと考えねば
やはり正しいキーを使う必要があると考えました。
なので、同じ寸法のカップリングでキー溝仕様のものが欲しかったのですが見つかりません。
そこで考えたので以下のような方法です。
キー溝加工の様子。つらすぎてツライサンになった pic.twitter.com/MpxpqUnkBY
— ヒダカ (@newlvAlPr) 2020年3月13日
頑張ってキー溝加工しました pic.twitter.com/qPdkh8ey9e
— ヒダカ (@newlvAlPr) 2020年3月13日
記事にもしましたが、(旋盤で穴にキー溝加工をする - 元高専生のロボット作り)
使用していたカップリングにむりやりスロット加工を施し、キー溝仕様カップリングを得るという荒業です(いいのか?)
まあ、これがうまくいったようで、モータ軸と中間軸の滑りもなくすことができました。
最後にはキックによってKZ3の距離までボールを飛ばすことが可能となりました。
KZ3動画があれば
おまけ
足回りとの組立の設計です。
実物です。基板むき出しなのがはずかしい。
— 東京都立大学ロボコン部TEXNITIS (@tmuTEXNITIS) 2020年7月27日
おわりに
たぶん、ほかの大学はキック機構にバネをうまく使っているんじゃないかなと思います。
私は、なんとなくバネを使うのはこわかったですね。
エネルギーをためるための機構が壊れたりするんじゃないかとか、暴発の可能性とか。
そんなところで、モータのパワーを直にキックに充てるという思想になっていました。
他にもいろんな機構が開発されていると思うと、他の大学の機構を見るのが非常に楽しみです。
私が考えたものと同じような機構がでてきたらうれしい、会場で機構をぶんぶん振り回すさまは画になりそうです。
TEXNITISは棄権という形になってしまいましたが、ロボコンは非常に楽しみにしています。
ロボコンが無事に開催されることを切に願っています。